<目的>近年、ピアス型イアリングの装着が急速に浸透し、それに伴い耳垂部のピアスケロイドが生じている。一方、耳垂部以外の耳介ピアスケロイドは耳垂部に比べて少ないが、ボディピアスの流行につれてその数が増えてきている。今回、外科的治療および後療法を行い8か月間以上経過観察できた耳垂部以外の耳介部ピアスケロイド12例を検討し、若干の知見を得たので報告する。
<対象および治療法>1999年4月より2004年10月までに外科的治療および後療法を行い8ヶ月間以上経過観察できた耳垂部以外の耳介部ピアスケロイド12例15箇所を検討した。手術法は可能な限り切除・単純縫合を基本とした。しかしケロイドが大きく全摘すれば耳介に変形が生じる場合は、一部の皮膚とケロイド塊のみを選択的に摘出し、残った表層皮膚を皮弁として使用し欠損部を再建した。また、後療法としては,ステロイドの局所注入を2週間毎6回行い、同時に熱可塑性プラスチックを用いた患部の持続圧迫を6か月間行った。
<結果>年齢は17歳から26歳(平均20.2歳)、男2例、女10例であった。ピアス施術者は全員患者本人であった。ピアス施術からケロイド発生までの期間は6か月から24か月(平均11.5か月)であり、発生部位は左側のみ10例10個、両側2例5個の合計15箇であり、右側には見られなかった。また、2例に耳垂にケロイドを合併していた。手術方法は 切除・単純縫合が6個所、切除・皮弁形成術例2個所、切除・ケロイド表層皮弁術7個所であった。手術後の経過観察期間は8か月から33か月(平均14.5か月)であり、1例に再発を認めた。
<考察>耳垂以外の耳介部ピアスケロイドに対して、後療法を前提とした外科的治療が有効であった。今後、ボディピアスの流行につれて耳垂部以外の耳介部ピアスケロイドの発生は増加すると思われる。