これまでの範囲では、一部に切除縫縮術も取り入れながら治療を行うことが可能でした。
しかし、広範囲となれば中途半端な切除縫縮術はかえって傷跡を醜くし、また治療期間が長くなり、治療費も高額になります。
広範囲の治療は、覚悟を決めて炭酸ガスレーザーを用いた皮膚削皮術を受けるか、全く治療しないで一生付き合うかかのどちらかとなります。
「一生付き合いたくないから、受診したのに」と聞こえてきそうですが、それほど治療は困難となりす。
理由は、炭酸ガスレーザーを用いた皮膚削皮術といえども、1回ではできず、数回の治療が必要となり、治療費も高額となります。
また、広範囲の刺青は手彫りが多く、機械彫りに比べて、色素も多量にしかも深く入れてあるために、治療後の傷跡も醜くなります。
さらに、広範囲の刺青は背中を中心に入れてあるため、治療直後からの傷のケアも困難となります。
背中はいすやソファーなどの刺激を受けやすく、また就眠中は布団ですれて傷の直りが悪く、それに伴い痛みも続きます。
このように、広範囲の刺青の治療は、多くの問題も抱えています。
刺青を入れるなら「小さい刺青」にしてほしいと思うのは私だけでしょうか。
(患者さんの例)
50歳台の男性が、両上腕から背中にかけて和彫りの龍の刺青の治療を希望して受診されました。
できるだけ早く、治療費も安く、しかも傷跡もキレイにとの希望でした(なんと我儘な希望でしょうか)。
診察後私が提案した治療法は「立派な刺青ですので、一生付き合ったほうがいいですよ」でした。
ご希望に添えないことは明らかでしたし、中途半端な治療は後悔を残すことになりますのでお断りしました。
多少、無責任かも知れませが、治療の原則は医師の満足ではなく、患者さんが後悔しない方法を提案することです。
時にはお断りすることも治療だと考えています。
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