レーザー治療は理想的な治療法ですが、治療期間・治療費などの問題があります。そこで、従来から行われている外科的治療も考えなければなりません。外科的治療の適応としては、
1)レーザー治療の適応外の刺青(深くて装飾性の強いもの)
2)比較的小範囲の刺青
3)傷は目立っても早急に刺青である事が判らなくなる事を望む場合
4)総額の治療費を安くしたい場合
などです。
特に多いのが、結婚や就職前に早急に刺青である事をわからなくしたい場合です。
これには、実際に刺青を無くすことに加えて、心の刺青も消したいという思いもみられます。新しい出発には刺青は肉体的にも精神的にも大きな障害となります。
さて、具体的な外科的治療法として以下の方法があります。
1)単純切除縫縮術
1回で切除して縫縮する方法です。切除できる範囲は刺青の大きさと部位で決まりますが、皮膚に伸びのある部位ではかなり大きい刺青まで1回で取り除きます。しかし、皮膚に伸びが少ない部位では次の分割切除縫縮術をおこないます。
2)分割切除縫縮術
広範囲で皮膚に伸びが少なく1回では取り除くことはできない場合に、切除縫縮術を2~3回に分けて行います。
手術の間隔は、手術により無くなった皮膚の弾力が回復する約6か月間とていますが、部位によっては1年が必要な場合もあります。
また、1回で可能ででも、それに伴い機能障害(腕や肩が挙げにくいなど)が生じる場合は、分割切除縫縮術を行うこともあります。
ただ、患者さんは1回を希望されますが。
3)炭酸ガスレーザーを用いた皮膚削皮術
炭酸ガスレーザーとは、刺青レーザーとは異なり色素だけを消し去るのではなく、レーザーの光で刺青を破壊(蒸散)して、取り除く方法です。
皮膚組織の大部分は水分でできています。炭酸ガスレーザーはこの水分に吸収される事で強力な熱効果を表し、刺青の組織を極めて限局的に破壊(蒸散)してしまいます。出血がほとんどなく、最小限のダメージで刺青を除去します。
比較的浅い刺青は一度で取る事ができますが、深いものは2~3回の治療が必要な時があります。
問題は傷が治るまでに1か月以上必要で、その間ご自分でガーゼ交換をしていただく必要があることです。
また、レーザーといっても消してしまうレーザーではなく削るため、当然傷あとは残ります。
4)皮膚移植術
広範囲で分割切除縫縮術を受ける時間的余裕がない場合に行います。刺青のある皮膚をかみそりで除去し、そこに太ももやお尻の皮膚を採ってきて移植する方法で、かなり広い範囲でも可能です。しかし、皮膚移植は最後の手段だと思ってください。
よく、皮膚移植をすると完全に分からなくなると考えられていますが、そのようなことはありません。どんなにうまく移植できても、本来違う場所から移植された皮膚が全く同じになる事はありません。
また、一般に刺青の場所は傷あとが醜くなる場所(腕、肩、胸など)ですので、移植した皮膚も醜い形として残ります。
そのために、その後移植した皮膚を分割切除する場合もあります。さらに皮膚を採った場所(donorと言います)にも傷あとが残ります。結局、刺青を除去した場所と皮膚を採った場所の2箇所に傷あとが残る事になります。
皮膚移植の適応としては、中程度の範囲の刺青で炭酸ガスレーザーを用いた皮膚削皮術適応では傷の治りにかなり時間がかかり、仕事等に支障が生じる患者さんの場合は時に行うこともあります。
私自身は刺青の治療に皮膚移植は行っていません
以上の方法がありますが、実際は、刺青の状態や患者さんの希望によりこれらの治療を組み合わせて行っています。