分割切除縫縮術は最低でも2回の手術が必要ですし、治療期間も少なくても半年は必要です。
少しでも早く刺青と「さよなら」したい一身で受診したのに、治療期間半年!
それでは間に合わない。どうしよう? 他に方法はないの?
これが患者さんの正直な気持ちではないでしょうか。
このような患者さんに行っている方法が「炭酸ガスレーザーを用いた皮膚削皮術」です。このレーザーは色を消すレーザーとは異なり、「皮膚を削るレーザー」と思われたら良いかと思います。
削りながら刺青を取り除いていきます。
「炭酸ガスレーザーとは」
炭酸ガスレーザーは、気体の炭酸ガスを媒質としたレーザーです。
通常のレーザーは特定の色に吸収されてその色を破壊するのですが、炭酸ガスレーザーは色に関係なくどんなものにも吸収されます。
特に水分に良く吸収されます。炭酸ガスレーザーを水分の多い組織に照射すると、瞬時に1,000~1,500℃に達し、蒸発、炭化させます。
一般には「レーザーメス」と言われています。
刺青が彫られている皮膚組織の70パーセントは水分ですので、この刺青の皮膚に炭酸ガスレーザーを照射すると、瞬時にその組織を破壊、蒸発、炭化させてしまいます。
また、レーザーのエネルギーはその表面でよく吸収されるため、深部への熱障害が少ないのも特徴です。
ほとんどのお刺青は1回の治療で取り除くことができます。
さて、夢のようは機械ですが、忘れていけないのが傷と傷跡です。
レーザー治療とはいうものの、肌にとっては傷をつけられたことになります。
それも深い擦り傷に!当然治療後には痛みが生じます。
以前は仕方ないといって痛み止めを処方して対応していたのですが、それではなかなか痛みが取れないと言われていました。
そこで、最近は照射部位に特殊は被覆剤を貼り付けることでほとんど痛みを抑えることができるようになりました。
「痛いのは仕方ない、刺青を入れたあなたが悪い。治療だから我慢しなさい」と言われた患者さんのおられたようですが、私も痛みに弱いので、痛みが少なくなるような工夫を常に考えています。
ご心配なく!
レーザーと聞くと「傷跡がのこらない」と思われている方が多いのですが、残念ながら確実に残ります。
傷跡は刺青の深さや部位で決まりますが、患者さんの体質も大きい要因となります。
「傷跡とうまく付き合ってください」としかいえない自分が情けないのですが。
(患者さんの例)
30歳代の男性が左肩の黒1色の龍の刺青治療を希望されて受診されました。
希望治療期間は2ヶ月。理由は不明(言いたくないとのことでした)。
傷跡のことを十分に説明し、納得いただいた上で、炭酸ガスレーザーを用いた皮膚削皮術をお薦めしました。
治療時間は2時間、その後は2-3回の通院と自宅での処置で終わりました。
傷跡は残りましたが、短期間で治療できたことの患者さんは満足されました。
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